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異文化理解の観点からみた、豪の潜水艦開発計画を巡るフランスとアメリカの対立

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先週から連日のように各国のメディアに取り上げられ、特に当事国であるフランスでは『潜水艦危機』として、今世紀最大の儲け話が飛んだことに私の周りのフランス人はこの問題について、「とんでもないことだ!」「裏切りだ!」「「アメリカ人は信じられない!」と皆怒りをあらわにしています。

今回の争いの発端は、今年6月にイギリスで開催されたG7サミットの場にて秘密裏に米英豪の新しい安全保障協力の枠組み「AUKUS」が生まれ、その流れで先週に入って豪政府がアメリカからの原子力潜水艦購入計画を発表。一方、2016年からフランスとの間で進めていた次期潜水艦(こちらはディーゼル型)開発契約を破棄したことでした。怒りのフランス政府はルドリアン外相が、当事国オーストラリアはもちろん、更にアメリカを強く非難する声明を出し、その後ワシントンとキャンベラから駐フランス大使の召還を決定したのです。

こうした場合は当事者それぞれの言い分を聞いてみないと分かりませんので、フランスのルドリアン外相、豪のモリソン首相の声明の他に、フランス、オーストラリアとアメリカでどのようにこの件が報道されているのかの少し見てみましたが、其々が正当性を主張しているのがわかります。

もうこれは、人に対する物事の伝え方、さらに人によってそれぞれ異なる捉え方、受け止め方の違いからも今回の問題は起きているように感じてならないのです。

たとえ同じ日本人同士であっても、伝え方を工夫しないと相手に伝わらない事はよくありますが、この件では言葉も文化も異なり、コミュニケーションの取り方も異なる米豪vs仏の争いの根底に異文化不理解があるようです。

以前のブログの中でも触れましたが、お互いが母国語でない英語でコミュニケーションを取る場合、本件ではフランス側との交渉が全て英語で行われたと思いますが、どんなにフランスの交渉相手が流暢に英語でコミュニケーションが取れても、思考回路やマインドセットは母語のままなのです。

また、英語が共通言語だからといって、アメリカ流ビジネスをヨーロッパ人に押し付けても違和感しか持たれません。フランス人特有の習慣や考え方、とりわけフランス型組織の意思決定を十分理解したうえで、異文化の相手に明確に説明する必要があります。相手の国の
ビジネス習慣や考え方、意思決定方法などを理解して初めてお互いを理解し合い、歩み寄ることができるのです。

さらに、今回の争いごとに登場している国々の特徴を異文化理解の観点から付け加えますと、米豪はいずれも、形式的な言葉や飾り立てた表現は必要なく、問題とその解決策を端的に言語で表現するローコンテクスト(低文脈)文化、一方のフランスは、文脈や状況に応じたコミュニケーションを取るハイコンテクスト(高文脈)文化で、空気を読む、以心伝心、阿吽の呼吸のコミュニケーションをとる日本人により近い傾向があります。

もう少しこのハイ&ローコンテクストを説明しますと、ハイコンテクスト文化では、繊細で含みのあるコミュニケーションが多く、メッセージの受け止め方も、行間で伝え、行間で受け取る傾向があります。ですので、コミュニケーションスタイルとしては、ほのめかしたり、はっきりと口にしないことが基本です。私たち日本人のようですね。

ローコンテクスト文化では、シンプルで明確であり、メッセージの受け止め方は額面通りに伝え、額面通りに受け取ります。コミュニケーションスタイルは、明確に伝えるためなら、繰り返しも歓迎する。

このハイ&ローコンテクストの両者が相手との文化の違いを認識していなかったとしたら、お互いの伝えた通りに相手がメッセージを理解していると考えていたら、当然今回のような食い違いが生じてしまうのも納得できます。

最後にもう一つ、異文化の側面を付け加えておきますと、意見の相違などで対立が起こると怒りや感情をあらわにするのはフランス、それに比べアメリカやオーストラリアはやや抑える傾向があり、さらに新しい安全保障協力の枠組み「AUKUS」の最後のメンバーのイギリスは、さらに争い事を避け、怒りの感情も抑える傾向があり、英米豪仏の中では最も日本に近いようです。今回の件では、イギリスは当事国ではありませんが、完全に蚊帳の外にいるかのような態度をとっていますが、余談ではありますが、フランスとイギリスの関係は非常に複雑で、本件によりさらにマイナスに影響していくことは避けられない状況です。

異文化理解を深めることは、国際ビジネスに限らず外交面でも非常に重要であるということが今回の潜水艦を巡る国際問題でもよく分かりました。ぜひ皆さんも異文化理解の側面から外交問題などを解読してみてください。案外、楽しいものです。

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